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メールマガジン 2007年バックナンバー

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◆ 3Bサイエンティフィック 月刊メールマガジン 2007/12/25 ◆
http://www.3bs.jp/top_m.htm vol.31
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今月号の内容:

┌目次───────────────────────────────┐
  ※読者限定ページ 人体解剖学ビデオ/DVD 限定ページ
  1. 今月の新製品
2. 特集: [ 保健・安全 ]カテゴリ新設,ネットに商品続々登場
3. 「My人体模型記」 ~私はこんな使い方してます!~
4. 「医院・診療所必見!労務のツボ」
~社会保険労務士小野本美奈子先生
5. 先生のコラム 「 解剖学者の健康談義 」
    ~連載エッセイ 第20回 新潟大学名誉教授,解剖学者 藤田恒夫先生
6. 月刊学会情報
7. 編集後記
└─────────────────────────────────┘

 

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※読者限定ページ 解剖学DVD
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メールマガジン読者,又は登録済みのお客様限定のページを
ご用意しました。通常のようにトップページや検索エンジンから
アクセスすることは出来ませんのでご注意ください。

また,ご専門の方以外はご覧にならないようお願い致します。
(実際のサンプル映像もあるため)

●限定ページ 「人体解剖学ビデオ/DVD」
  http://www.3bs.jp/video/vana/index.htm

 本物の人体を使用した機能解剖マニュアルのDVD版とVHS版です。
  サンプル動画もご用意しております。 

 

 

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1. 今月の新製品 映像ソフト
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 適切な初期診療「プライマリ・ケア」のためには,
  自身の専門だけではなく,総合的な医学知識が不可欠
  なのはご存知のとおりです。

 プライマリ・ケアのための情報の宝庫として人気の
  ケアネット・チャンネル(スカイ・パーフェクTV)で
  放映された番組から特に好評だったものが続々ソフト化
  されています。
 
  今月も7タイトルを追加しておりますので,
  是非ご覧下さい。
  (サンプル動画もあります!)

 

 ■ジェネラリストのための他科診療エッセンス Q&A 2
                -整形外科・心療内科-■
    価格:4,500円

 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60104.htm

 他科診療シリーズ第2弾。

 一般内科医の質問に,整形外科と心療内科の
  各科専門医が回答していくQ&A形式で,痒いところに
  手が届きます。

 

 ■ジェネラリストのための内科外来Q&A -不整脈-■
    価格:3,990円

 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60107.htm

 他科診療シリーズ第3弾。

 最新の知見に基づき,薬物療法と非薬物療法それぞれ
  について日常診療に立脚した悩み所をQ&A形式で
  具体的に解説します。

 

 ■Dr.夏井の創傷治療大革命■
    価格:4,500円

 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60105.htm

 「ガーゼと消毒を使う創傷治療は患者の苦痛を増し
  傷の回復を遅らせる」と断言するドクター夏井。

 湿潤療法によって傷がみるみる治っていくリアルな
  過程をお届けします。特典映像あり。

 

 ■Dr.岡田のアレルギー疾患大原則 (第1巻)■
    価格:5,980円

 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60106.htm

 判断に悩むRAST検査や,喘息と鼻炎治療の相互効果,
  患者に誤解を与えないアレルゲン曝露の指導方法など,
  視聴したその日から役立つ情報が満載。

 

 ■Dr.齋藤のハワイ大学式スーパートレーニング■
    価格:上・下巻各10,500円

 上巻 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60108.htm
  下巻 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60109.htm

 アメリカの医学生が学ぶ「PBL=Problem Based Learning」
  の諸技法を伝授。思考ロジックの向上を目指せます。

 日米の思考方法の違いに始まり,病歴聴取の手順や,
  提示された症例を議論を通して情報を整理していく
  技術と方法などを,3つのケース・スタディをあげながら,
  解説していきます。

 

 ■Dr.林の笑劇的救急問答3 (上巻)■
    価格:4,500円

 http://www.3bs.jp/soft/primary-care/w60110.htm

 笑劇の人気シリーズ,3rdシーズン。

 今回は「うそっこの痙攣と麻痺」「失神救急」を
  取り上げます。検査結果だけで安易に診断してしまって
  思わぬ落とし穴に嵌りそうになる研修医を,
  ユーモアたっぷりのDr.林が厳しく優しく指導します。

 

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2. 特集 [ 保健・安全 ]カテゴリ新設,ネットに商品続々登場
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[ 物理実験器具 ]もそうですが,スリービーのホームページには
カテゴリーがいくつか新設されました。
それに伴い,ネット上で直接購入できる製品ラインナップも
増えつつあります。

先月のメルマガでも紹介いたしましたが,体脂肪模型,
筋肉模型,肥満模型などの「生活習慣病模型」のネット
新規追加に伴い,[ 保健・安全 ]カテゴリーを新設しました。

飲酒や喫煙教育,性教育などもこのカテゴリーに移動しました。
飲酒状態体験メガネや飲酒体験ゴーグルなどをお探しの方は
こちらの[ 保健・安全 ]カテゴリーからお入り下さい。

[ 保健・安全 ] カテゴリー↓
  http://www.3bs.jp/healthcare/index.htm

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

さて,以下はネット上に最近追加された
[ 医療シミュレーター ]製品群です。

[ 出産・婦人科学 ]
  http://www.3bs.jp/med/birth/index.htm

 実際の肌のような感触,主な婦人科診察の練習に必要な
  部分を忠実に再現した,
  ▼婦人科診察トレーナー
  http://www.3bs.jp/med/birth/w44535.htm

 解剖学的に正確な卵管采と卵巣が組み込まれた
  一般的な婦人科診察の練習ができる,
  ▼婦人科診察シミュレーター
  http://www.3bs.jp/med/birth/w45024.htm

 解剖学的ランドマークを備えた一般的な婦人科診察の
  練習ができる女性下腹部モデル,
  ▼婦人科診察シミュレーター 腹腔鏡対応型
  http://www.3bs.jp/med/birth/w45043.htm

 

[ 二次救命(ALS)シミュレータ
           気管挿管・気道管理 ]
  http://www.3bs.jp/med/als/index.htm

 第2肋間の鎖骨中央線上と第5肋間の腋窩中央線上で
  穿刺が可能,気胸症の処置方法を練習できる,
  ▼気胸トレーニングマネキン
  http://www.3bs.jp/med/als/w44524.htm

 舌浮腫,喉頭けいれん,嘔吐機能も備え解剖学的にも
  正確に再現。レベルの高い挿管練習が可能な,
  ▼成人気道管理トレーナー
  http://www.3bs.jp/med/als/w44668.htm

 高度な気道確保のための臨床指導や練習が行える,
  ▼成人気管挿管トレーナー
  http://www.3bs.jp/med/als/w44687.htm

こうした商品ラインナップが続々ネットに登場,時間を気にせず
パソコンから簡単に注文できるようになりましたので,時折
サイトを覗いてみて下さい。

ネット上に掲載のないものは,従来通りカタログをご覧の上,
お電話やファックスにてご注文承ります。

 お問合せはどうぞこちらへ : 3b_mag@3bs.jp

 

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3. 「My人体模型記」 ~私はこんな使い方してます!~
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□ご職業:カイロプラクター
□ご利用製品: 実物大脊柱模型
□ご利用場所: クリニック等
□ご利用例:
健康教室で姿勢の変化に伴う生理彎曲の喪失,例えば
頭部が前傾することにより首・肩の筋肉にどれ程重力
負担が増加するかを説明する際に使用しています。
患者様に脊柱模型を逆さまに持ってもらい,骨盤部を
頭部に見立てて重さを感じていただき,それを前傾
させるとさらに重く感じる事を実感してもらいます。
脊柱模型には適度な重さがあり,実際に重力の変化を
体感することで,物理理論だけでなく患者様の理解と
認識が深まります。

●ご応募ありがとうございました。
カイロ,整体の手技練習や説明に欠かせない脊柱模型
ですが,今回の方のようにお使いいただくと,姿勢の
重要性を理解してもらう適切なツールともなりえる
ことがわかります。非常に上手な使い方で私どもも
勉強になります。ありがとうございました。

脊柱模型のページ
http://www.3bs.jp/model/spine/index.htm

 

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4. 「医院・診療所必見!労務のツボ」
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   「障害年金を御存知ですか?」

         小野本社労士事務所 小野本美奈子

今年もあとわずか。
何かと年金が話題になった年でした。
年金というと退職してからの老齢年金を思い浮かべる方が
ほとんどでしょうけれど,年金には障害年金もあります。

■ 精神疾患で年金はもらえる?

 「うつ病なのですが年金はもらえるでしょうか」
  30代の女性。働いていた(=厚生年金に加入していた)とき
  精神的につらい状況が続き,眠れないなどの症状が出て,
  通院を始めた。しばらく休職していたが,復職がむずかしくなり,
  自分から退職願を出して退職した。
  定期的に通院し薬をもらっている。
  医師からは「うつ病」と診断され,自宅で療養を続けている。
  働いて収入を得ることは難しい・・・

■ 障害年金の対象となる病気とは?

 障害年金を請求するときは医師に診断書を書いてもらいます。
  医師がどう診断書を書くか,年金がもらえるかどうかの
  キーポイントです。
  障害年金請求のための診断書の種類は8種類。
  眼,聴覚等,肢体の障害,呼吸器疾患の障害・・・精神の障害。
  統合失調症,そううつ病,老人性痴呆,てんかん,知的障害など
  精神の障害がある場合も障害年金の対象です。

■ 障害の等級

 障害は程度により1級,2級,3級とあります。
  国民年金に加入していれば1級の障害基礎年金,
  2級の障害基礎年金が支給されます。
  厚生年金に加入していれば基礎年金に加えてそれぞれ
  1級,2級の障害厚生年金が支給されます。
  厚生年金だった場合,3級の障害厚生年金の制度があります。
  (国民年金には障害3級はありません)
  
■ 障害の程度

 1級障害とは日常の生活が一人ではできない,常時介護が
  必要な場合になります。
  2級障害とは日常生活を一人ですることが難しく,労働による
  収入は受けられないような場合になります。
  3級障害とは労働が制限を受けるか,または労働に制限を加える
  ことを必要とする程度のものとされます。働いて収入を得られ
  ないなら3級の認定の可能性はきわめて高いのです。

■ 診断書作成のポイント

 医師は医療・治療のプロ。
  通常医師に求められる診断書は医学的な病状を把握し,治癒を
  目指して治療するためのものといえるでしょう。
  障害年金受給の鍵を握る診断書の求めるものは,医学的な診断
  ではありません。障害年金という所得保障がなされる状態か
  どうかを決めるための診断書です。
  症状が日常の生活にどのように影響があるか,日常生活が
  どのように困難であるかを書いてもらうことになります。
  精神の障害の診断書の書式には日常生活状況を記載する欄が
  あります。本人が家族との同居であっても,「一人暮らしを
  想定して」書くことになっています。
  食事や金銭管理,買い物など援助が必要かどうかを記載して
  もらいますが,ここで言う援助とは家族や周りの人の声掛けや
  注意などを含めた,幅の広いものです。そうした援助がなければ
  できない場合は「ひとりでできる」という評価にはなりません。

■ 医学的な診断書ではない!

 「障害年金診断書を作成したとき,障害を重く評価すると
  その人を傷つけるような気がして障害を軽めに記載したことが
  あった」という医師がいます。
  所得保障が必要かどうか,という観点,治療医学的な診断では
  なく社会医学的な診断が求められています。

■ 請求しなければもらえない

 年金は請求しなければもらえない,障害年金もそうです。
  私たち社会保険労務士は年金のプロですが,診断書作成の
  プロではありません。
  医師は医療・治療のプロですが,障害年金について正確な
  知識があるとは限りません。
  ソーシャルワーカーなど関係の方との連携も含め,障害年金を
  もらえる状態なのに請求していない,もらえる状態なのに,
  診断書が趣旨を理解しないで書かれたためにもらえないという
  ことの無いようにしたいものです。

■ おねがい

 このメルマガ読者は医療にかかわる方が多いと思います。
  働いて収入を得ることができない状態なら障害年金受給の
  可能性があります。
  治療・治癒も大事ですが,「障害年金」についても御理解を
  いただきたいと思います。
  もしかしてということがありましたら,メールでお問い合わせ
  ください。力になりたいと思います。自ら好んで病気になる人は
  いないのですから。

■ 相談者は障害年金をもらえるか?

 もらえると断定はできません。
  医師の診断書にかかっています。医師に障害年金の診断書の
  意図を伝え,障害年金・社会保障への理解を頂いて記載をお願い
  することにします。

 
~編集部より~

これからは核家族化がさらに進み,一人暮らしの割合もますます
増えるでしょう。今は一人でなんとかできると思っても,障害を
持つ方がある程度高齢になり,いきなり伴侶に先立たれた場合の
ことも今から想定しておいた方が安全です。

障害年金の対象は思ったよりも幅広いようですので,もし,先生に
ご相談ご希望の方はお名前,ご住所,お電話番号等をご明記の上,
編集部までメールをお送りください。
(※いただいた個人情報を第三者に公開することはございません。)

    編集部宛メール:3b_mag@3bs.jp

小野本先生は特定社会保険労務士の資格をお持ちです。
特定社労士には労使紛争解決の代理権が与えられています。

又,先生のホームページに,今まで手がけられた労務相談
ベスト5が出ています。
経営上の参考になりますので,是非,ご覧ください。
http://www.sr-onomoto.jp/

   
▽先生へのご相談やお仕事のご依頼を受け付けております。
 まずは [ 3b_mag@3bs.jp ] までメールいただくか
 弊社までお電話にてお問合せください: 

 日本スリービー・サイエンティフィック株式会社
 小野本先生へのお仕事依頼

 電話:025-282-3228
 メール:3b_mag@3bs.jp

▽先生へのご意見・ご感想などは 3b_mag@3bs.jp まで
   お待ちしております。
  日頃感じている疑問など,労務に関するご質問なども
お送りください。

 

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5.先生のコラム
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    「 解剖学者の健康談義 」

     ~ 第20回 「膵臓とランゲルハンス島」

           新潟大学名誉教授,解剖学者 藤田恒夫

 

 糖尿病は,今や我が国の国民病と言ってもいいでしょう。テレビや
新聞で糖尿病という言葉に2度3度出会わない日はないかもしれません。

 糖尿病が膵臓の病気であることは,誰もが知っていますが,さて
その膵臓は,ということになると,どんな臓器かイメージすることの
出来る人は10人に1人もないでしょう。お腹の奥の深いところにあって,
膵臓癌は見つけにくく治りにくい・・・。これは,たぶん昭和天皇の
ご病気の報道から得た,日本人の一般的なイメージでしょう。

 膵臓は解剖学で言う後腹壁に埋まっており,しかも色が白くて,
まわりの脂肪組織と紛らわしいので見つけにくい。江戸後期まで,
日本の医学者は膵臓の存在を知りませんでした。中国から来た
「五臓六腑」のなかに膵臓は入っていません。

 ヨーロッパでは,かなり古くから膵臓の存在は知られていましたが,
ラテン語の名称pancreas は「全体が肉」という意味で,つまり肉の
塊ということです。

 オランダ伝来の解剖学書によってパンクレアスの存在を知った
日本の蘭学者は,新しい臓器には新しい文字をと,肉(にくづき)を
萃める(=集める)という膵の字をつくりました。この国字
(日本製の漢字)が,中国を初め漢字使用国に広く採用されています。
解剖学者として,この臓器を格別に愛してきた私としては,
「すい臓」と書かれた新聞記事などを見ると,恋人の名を汚された
ようにがっかりします。

 ちなみに私は,このパンクレアスという昔から使われている言葉は,
「全体が筋肉」という意味ではなく,「全体がお肉」つまり,
丸ごと食べられるという意味だろうと解釈してみました。今日の
ヨーロッパには膵臓料理はありませんが,昔は,料理して食べていた
のではないか,という仮説をたて,新潟の小さなフランス料理店の
シェフの協力を得て,数点の膵臓料理を開発しました。
(美味ですが下ごしらえに工夫が必要)

 そんな思い出はさておき,なにしろ,壁のなかの肉だか お肉だかの
塊では,何をしている臓器か,西洋でも分かっていませんでした。

 解明の糸口をつけたのは,17世紀中葉,イタリアで活躍した
ウイルズングというドイツ人でした。肉塊と十二指腸をつなぐ管
(今日の知識では消化液を通す導管)を見つけたのでした。前後して,
耳下腺や顎下腺などの唾液を口へ運ぶ導管が発見され,「腺」の
概念が生まれる時代でした。そんな経緯を反映して,膵臓は今日の
普通のドイツ語で「腹の唾液腺」Bauchspeicheldruse と呼ばれます。

 発見,発見と大げさな,と思われる方には,とっておきの
エピソードがあります。ウイルズングの時代には,発見を報告する
科学雑誌がなかったこともあり,誰が何を発見したかについて,
学者仲間でもめることがありました。ウイルズングの場合は,
「膵管は俺の方があんたより先に見つけた」と言う男が現れ,
プライオリティ(先取権)を争う決闘となって,殺されたと
伝えられています。

 こうして,口の唾液腺も腹の膵臓も,食物を分解する消化酵素を
つくる腺と,それを運ぶ導管から出来ていることが確立し,酵素の
性質も明らかになってきました。

 ところが,顕微鏡で臓器が調べられる時代になると,膵臓に点々と
明るい細胞の集団が存在することが分かりました。1869年にドイツの
22歳の医学生,パウル・ランゲルハンスが見つけたので,ランゲル
ハンス島と呼ばれます。発見されて長い間,この島の正体は
不明でしたが,膵管はこの組織につながっていない,そのかわり
沢山の血管が島を縦横に走っていることから,何かの物質を作って
血液のなかに送り出す,つまりホルモンを分泌する内分泌腺であると
想像されるようになりました。

 1889年,ストラスブルグのオスカー・ミンコフスキーがイヌの膵臓を
全部取り去るという難しい手術に成功。結果は,イヌが多尿と糖尿を
起こしました。この偶然の大発見を突破口にして,激しい国際的な
競争の末,1924年,カナダの整形外科医バンティングと医学生ベストが,
膵臓の抽出液から血糖を下げるホルモン,インスリンを発見します。
このあたりの物語は,私もいろいろなところに書きましたので,
ここでは省きます。

 糖尿病には,若年性の(小児に起こる)Ⅰ型糖尿病と,成人病の
(中高年に起こる)Ⅱ型糖尿病があります。今,国民病と騒がれるのは
Ⅱ型の方で,ランゲルハンス島のインスリンを分泌する細胞が,太り
過ぎ,食べ過ぎ,運動不足などの不摂生のせいで,酷使され疲れて,
インスリンをうまく出さなくなった状態です。体質(多分 インスリン
細胞がヤワな)が大きい因子でもありますが。

 これとは対照的に,子どもが突然 発病するⅠ型糖尿病は,インスリン
分泌細胞に(多くは遺伝的な)欠陥があり,変質した細胞を外敵(非自己)
と勘違いしたリンパ球が襲いかかって全滅させてしまうという病気です。
インスリンは血液と肝臓の糖を,脳をはじめ,全身の細胞に与える生命
直結の働きをしているので,これなしには1日も生きていけません。
Ⅰ型糖尿病の患者は,バンティングとベストがインスリンを取り出した
ことで,死の運命から救わましたが,今日もなお生涯にわたってインス
リンを注射し続けなければ生きて行けないことに変わりありません。

 ランゲルハンス島にあるインスリン細胞というのは,血液のなかの
ぶどう糖の量(血糖値)が上がると敏感にそれを感じ取り,それに
応じた量のインスリンを血液のなかに放出します。敏捷で精密な働きは,
神経細胞(ニューロン)と変わらないので,「パラニューロン」と
呼ばれることもあります。

 そんな「感じて出す」細胞なら,進んだ工学を用いて人工的に作れる
のではないか。いわばミクロのセンサーロボットを作って,患者の
からだに埋め込む試みもなされてきましたが,これはうまく進展して
いないようです。

 むしろ今日の主流は臓器移植です。 膵臓から顕微鏡の下でランゲル
ハンス島らしきところを切り出し,このゴマ粒のような組織を肝臓へ
流入する血管(門脈)に流し込む。すると肝臓の血管にひっかかった
細胞が,そこで生き残り,あわよくば増殖して,インスリンを送り出し
てくれるというわけです。これは多くの成功例があるとは言え,心臓や
腎臓の移植と共通の,免疫学的な困難や倫理的な問題があります。

 最近,京都大学の山中伸弥教授のグループが,ヒトの,しかも患者
自身の皮膚の細胞を4つの遺伝子を用いて魔法のように若がえらせ,
あらゆるタイプの細胞に変身可能の「万能細胞」を作り出しました。
本当にすばらしい研究だと感嘆にたえません。膵臓を愛する学者として,
この目でⅠ型糖尿病で死んだ子のランゲルハンス島の惨憺たる情景を
見てきた私としては,山中教授の万能細胞から,何よりも先ずインスリン
分泌細胞をつくって,あの子たちを,そして生涯インスリンを打ちつづ
ける人たちを救ってもらいたいと願わずにはいられません。
ニューロンと同等の精密機能を備える細胞ですが,それだけに単純な
構造と機能の持ち主です。患者の皮膚からとった万能細胞が,失われた
細胞に代わってⅠ型糖尿病の患者の体内に生きる日が,一日も早いことを
希っております。

 「解剖学者の健康談義」,いつものことながら,からだの仕組みに
ついての談義はしても,あまり健康に役立つお話は出来ません。
今回もⅡ型糖尿病の「健康談義」は,ほとんどせず,大方のご期待に,
あえてお応えしませんでした。
食べてしまうほどに愛しい膵臓やランゲルハンス島のことを語らせて
頂いたところで,この乱暴な健康談義を終わりにしたいと思います。
ご愛読ありがとうございました。

 

[ 編集部より ]
「 レオナルド・ダ・ヴィンチのあれこれ 」(全10回),
「 解剖学者の健康談義 」(全20回)と約2年半の間,
解剖学をベースに一般の方にもわかりやすい文章で
ご好評いただいた藤田恒夫先生のシリーズは今回で
最後となります。

 お忙しい中,毎月原稿を送ってくださった藤田先生に
心から感謝申し上げるとともに,読者の皆様のご愛読,
誠にありがとうございました。

<新連載の予告>

来月からは浜松大学健康プロデュース学部・
竹内修二教授が解剖生理学の基本をじっくり
丁寧に紐解く新連載,

『毎日使っている自分のからだを知ろう!』

が始まります。

これから勉強しようと思われている方は
もちろんのこと,すでに医学・医療関係の
専門職でばりばり働かれている方にとっても,
忘れていたことを思い出したり,知っている
ようで知らなかった新たな発見に出会える
興味深い内容です。

どうぞ,ご期待下さい!

【竹内教授の最近の著書】

『五感のふしぎ絵事典―感覚と脳のメカニズムがわかる』
http://tinyurl.com/38vzkt

『“からだのしくみ”がよくわかる人体ぬりえ』
http://tinyurl.com/2jdh6k

『大切にしよう!体と心 (3)』
http://tinyurl.com/389mfk
 

 

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6.月刊学会情報 
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HH20/1/12~H20/1/13
日本成人病学会 第42回日本成人病学会学術集会
東京都・都市センターホテル
http://www.j-seijinbyou.gr.jp/

H20/1/18~H20/1/19
日本脳神経外科救急学会 第13回日本脳神経外科救急学会
東京都・品川プリンスホテル メインタワー(新館)
http://jsne2008.umin.ne.jp/

H20/1/23~H20/1/25
日本臨床腎移植学会 第41回日本臨床腎移植学会
静岡県・浜名湖遠鉄ホテル エンパイア/ホテル九重
http://www.ibmd.jp/~jscrt41/

H20/1/24~H20/1/25
日本口腔腫瘍学会 第26回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
大分県・別府国際コンベンションセンター
http://www2.convention.co.jp/jsot26/

H20/1/25~H20/1/26
日本総合健診医学会 日本総合健診医学会第36回大会
兵庫県・神戸国際会議場
http://www.congre.co.jp/36kenshin-kobe/

H20/1/25
大腸癌研究会 第68回大腸癌研究会
福岡県・JALリゾートシーホークホテル福岡
http://jsccr.umin.jp/68/

H20/1/25
東日本手の外科研究会 第22回東日本手の外科研究会
新潟県・朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター
http://jssh.gr.jp/ejhand/

H20/1/26~H20/1/27
日本臨床微生物学会 第19回日本臨床微生物学会総会
東京都・タワーホール船堀
http://jslm2008.umin.jp/

H20/1/26
日本集中治療医学会 第25回日本集中治療医学会中国四国地方会
島根県・ビッグハート出雲
http://www.shimane-masui.net/chushi25icu/index.htm

H20/1/31~H20/2/1
日本頭頚部外科学会 第18回日本頭頚部外科学会総会・学術講演会
京都府・国立京都国際会館
http://www.nacos.com/tohkei18/

 

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7.今月の編集後記 by 岩子
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来年はネズミ年ですね。
皆さん,年賀状の用意はもうお済みですか?

私はこの年がくるのを今か今かと心待ちしていました。
なぜならわが家のモルたちを(テンジクネズミとして)
はれて年賀状に堂々と登場させられるからです。

さて,モルモットというと,皆さんどんなイメージを
思い浮かべるのでしょう?
実験動物?
可愛くて,人なつこくて,もっさりしたところなどが
人気で,最近はペットとして飼う人が増えてきました。
しかし,みかけによらず結構ガンコ。
好きな野菜がもらえるまで,テコでも動かない。
(すこし甘やかしすぎたかもしれません。)

それはそうと,動物病院ではまだまだ犬や猫が中心で
こうした小動物を診られる獣医師が少ないのが実情です。
わが家のモルたちも年をとり,病気になったらどうしよう
という不安があります。
だから,これから小動物に詳しい獣医さんが増えてほしいと
願っています。モルだけでなく,小動物は隠れた世間の
ニーズが結構あると思います。

さて,食べてばかりで全く動こうとしない,運動不足の
わが家の「メタボモル」たち。でも,のほほんとした彼らに
毎日癒され,今年も平和に終わることでしょう。

それでは皆さん,まだ早いですが,
よいお年を!


それでは今月はこの辺で。

来月号をどうぞお楽しみに!


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