プランク定数
実験番号:UE5010200
古典的な装置を改良して得られる実験装置を使って,既知の振動数の光を環状の陽極を通過させて陰極と衝突させると,光電効果により,陰極から電子が放出されます。その際に電子が持つエネルギーは,陰極と陽極間に阻止電圧を印加して,陽極に達する電子の流速を抑え,これがゼロになる電圧を計測することによって測定できます。電子の流速がゼロになる時の電圧値である,阻止電圧の閾値が,光の強度に依存しないことが,この結果から示されます。これにより,光電効果による電子のエネルギーもまた,光の強度に依存しないことが分かります。様々な振動数の光に対する阻止電圧の閾値を測定することにより,プランク定数が計算できます。
実験の手順
- 阻止電圧の閾値を光の波長の関数として測定します。
- 縦軸をエネルギー,横軸を振動数として,測定結果をグラフに表します。
- プランク定数の値と,電子を表面から飛び出させるのに必要な,仕事関数の値を測定します。
- 光電効果によって得られる電子のエネルギーが,光の強度に依存しないことを示します。
実験に必要な機器
実験解説書
基本原理
光電効果が示す2つの重要な特性は,レナードによって1902年に発見されました。光電効果により,陰極材料から飛び出す電子の数は,入射する光の強度に比例します。そのエネルギーは光の振動数に依存しますが,光の強度には依存しません。アインシュタインは1905年に,プランクによって発見された黒体放射の理論に基づく仮説を使って,この現象を説明し,量子力学の重要な基礎を築きました。
アインシュタインは,光が,振動数に比例するエネルギーを持つ,光子として伝播するものと仮定しました。
(1) (
はプランク定数)
のエネルギーを持つ光子が,陰極材料中の電子にぶつかる場合には,そのエネルギーが電子に受け渡され,この電子が以下の運動エネルギーを得て,陰極内から飛び出すことが可能になります。
(2)
電子の放出に必要なエネルギーである,仕事関数Wの値は,材料の性質に依存します。たとえば,セシウムの場合,その値は約2電子ボルト(eV)です。
本実験では,上記の関係を利用して,プランク定数 h を求めます。振動数 f の光が環状の陽極を通過して,陰極に当たり,電子を放出させる場合 を考えます。その結果として生じる,陰極から陽極へと向かう電流を,ナノアンペア電流計を使って測定しながら,この電流を抑えて値をゼロにするように阻止電圧U0を印加します。実験では,様々なLEDの光を使いますが,光を構成するスペクトルのそれぞれは,十分に幅が狭いので,個別の波長λを各構成要素に割り当てることができます。これにより,振動数は以下のようにして得られます:
(3)
ここで,c =2.998 x 108m/sは光の速度を表します。
ダイオードからの光の強度は,相対強度で0~100%の間で変化させられるので,電子のエネルギーの光の強度への依存性が調べられます。
評価
各場合において,阻止電圧が閾値U0に達したところで,電流がゼロになります。閾値に関するこの定義を,(2)式および(3)式と組み合わせると,
が得られます。ここで,は素電荷(電気素量)を表します。
したがって,エネルギーの値を y 軸に,
の値を x 軸 にとってグラフを描くと,直線の傾きからプランク定数が得られます。