フランク-ヘルツの実験

フランク-ヘルツの実験

実験番号:UE5020300

フランク-ヘルツの実験では,水銀蒸気中を通過する電子が非弾性衝突によりエネルギーを与えることが,ターゲット電流により観察できます。水銀原子に与えられるエネルギーは,励起準位により定まったある一定の値でのみ可能ということが分かります。この実験により,ボーアの原子モデルとその結論である離散的なのエネルギー準位の存在ということが確認できます。

実験の手順

  • 陰極 -グリッド間の電圧 Uを変化させて,ターゲット電流I を測定します。
  • 電流の極大値(もしくは極小値)の間隔ΔUを求めます。
  • ΔUと水銀の励起エネルギーを比較します。

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基本原理

1914年にフランクとヘルツが行った,水銀蒸気中に電子を加速して通過させる実験です。この時電子から水銀電子へのエネルギーのやりとりが,ある決まった値の整数倍で起こること,及びその時に水銀原子が紫外領域の線スペクトル(λ=254nm)を発することを観測しました。数カ月後にボーアが,この実験が自分の提唱した原子モデルの証拠であることに気づきました。これによりこのフランク-ヘルツの実験は,量子論の古典的な実験となりました。

この実験に使用する真空管は,熱陰極線と熱電子を加速するグリッド,電子を電流として観測するターゲットが順番に並んで入っています。グリッドとターゲットには逆電圧UGA がかかっています。この真空管には水銀が封入されており,加熱することで約15hPaの圧力になります。グリッドで加速された電子で,ターゲットの逆電圧を通過するだけのエネルギーを持っているものだけが,ターゲット電流として観測されます。

グリッド電圧Uを大きくするにつれて,ターゲット電流は大きくなっていきます。これは陰極線付近に空間電荷として分布している熱電子が,グリッド電圧による電場により力を受けるためです。グリッド電圧がU=U1の時に,水銀原子と非弾性衝突を行い水銀原子を励起します。それまでは水銀を励起するのに必要なエネルギーに足りず,弾性衝突を行っています。非弾性衝突を行うことで電子はエネルギーを失い,グリッド-ターゲット間の逆電圧を通過することができなくなり,ターゲット電流は0付近まで落ち込みます。ここでさらにグリッド電圧を上げてゆくと,再びターゲット電流は増加し 始めます。水銀原子を励起しても,残りのエネルギーが逆電圧を通過するのに足りるためです。しかしグリッド電圧を上げ続けU=U2になると,再度ターゲット電流は0付近に落ち込みます。水銀原子と2回衝突し,それぞれを励起するためエネルギーが小さくなるためです。その後もグリッド電圧を上げ続けると,3 回,4回と非弾性衝突を行い,そのたびにターゲット電流は0 付近に落ち込みます。

グリッド電圧U1,U2,U3 などで起こるターゲット電流の急峻な落ち込みの電圧間隔は,U=4.9Vと誤差の範囲で一定となっています。またこの電圧間隔に対応するエネルギーEHg=4.9eV は,観測される水銀原子の線スペクトルλ=254nmと一致しています。4.9eV は水銀原子の1S0 から3P1への遷移に対応しています。この結果より,非弾性衝突により離散的な値のエネルギーしか水銀原子は吸収できないこと,それが電子のエネルギー状態によることが分かります。ちなみに最初のターゲット電流の極小値は4.9eVではなく,陰極とグリッド間の接触電圧の分だけシフトしています。

参考資料

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